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石の鳥と流木造形作家
にわ ぜんきゅう氏

アトリエぜんきゅう
南知多町内海北向55-3 
TEL 0569-62-2967
http://www.nande.com/zenkyu/



人を優しくさせるひきつける 
       まあるい「ぜんきゅうワールド」

 今、知多半島でぜんきゅうさんの教室が開かれている老人ホームは6カ所。何冊もの本が出版され、TVや雑誌などのメディアへの登場も多い。が、ぜんきゅうさんはいつも同じだ。老人ホームでは引っ込み思案だったおじいさん、おばあさんを元気にしてしまう。作品を見ると話しをすると、何だかほのぼのとした気持ちになる。そこにあるのは人を優しく包み込む、作品のお地蔵さんの顔の様にまん丸な「ぜんきゅうワールド」。

最初の老人ホームでの教室

  にわぜんきゅうさんが常滑市にある特別養護老人ホーム「むらさき野苑」での講師を依頼されたのは、1992年、まだうすら寒い春先のことだった。
  ホームの2階の食堂で何人ものおじいさん、おばあさんの前に立つ。習字の筆や半紙、絵の具、画用紙などが用意されていた。一番前の席にいたおばあさんに「自分の名前を書いてみて」と言ったが、「字は習ってない、書けない」と言う。他の反応もほとんどない。この場を設定してくれた友人のことが頭をよぎる。おばあさんにも何とか字を書いてみて欲しい…こういう場所で人に教えるという経験のなかったぜんきゅうさんは懸命だった。
  おばあさんが、ぜんきゅうさんの示した字を真似て何とか書いた「うめ」の「め」の字が少しつぶれ、それを見たボランティアの人が「酸っぱそうなうめですね」と言った。周りから一斉に笑い声がわき起こった。一緒に笑い出したおじいさん、おばあさんが筆をとり絵の具を手にして、思いおもいに字や絵を描き始めた。
  教室が終わり、廊下で「うめ」さんたちの作品を貼っていると、いつの間にかホーム職員の人だかりができていた。「これ、ほんとにここに入っている人たちのものですか?」と聞く人もいる。この日だけの予定の教室が何とか終わり、ほっとしていたぜんきゅうさんに、園長から声がかけられた。
  「来週も来てもらえませんか」。この日から17年間、むらさき野苑での教室は今も続いている。

「内海に美術館ができたらいいですね」

  むらさき野苑の教室が始まって数年経った頃、ひとりのおばあさんから「ぜんきゅうさんにお地蔵さんを作って欲しい」と頼まれる。「人様が拝むようなものを作るなんてできない」と固辞していたが、再三の依頼で作ることになった。紙粘土で作ったお地蔵さんは色が白いので、内海の海岸の砂を貼り付けた。おばあさんたちは「かわいい」と大喜び。ホームに置かれたこのお地蔵さんの前には賽銭や花が供えられるようになり、よだれかけや帽子も着せられた。いつの間にか「砂地蔵」「砂かけ地蔵」と呼ばれるようになった。Tシャツ・うちわができ、「お地蔵さんの盆踊り」も開かれた。
  にわぜんきゅうさんの名刺には「石の鳥と流木造形作家」と書かれている。南知多の海岸で採集した自然石や流木を素材とするのが本来の仕事だが、「むらさき野苑での教室が始まってから〈絵の先生〉〈お地蔵さんのぜんきゅうさん〉って呼ばれるようになったんですよ」と笑う。
  「夢なんですけど、内海に美術館ができたらいいですね。すごい名画とかプロのものじゃなくて、ふつうの子供やご年配などの素人の作品が飾られてるような。そういう作品でも、見に来たくなるようなものがいっぱいあるんです。そこでいろんな新しい物事が生まれて、南知多から全国に発信できればいいなって思ってるんですよ」。美術館ができたら、付けたい名前の候補も頭にあるという。「ぜんきゅうワールド」はどんどん広がっている。




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